会社の社宅や借り上げ社宅に住んでいて、恋人と一緒に暮らしたくなった。自己負担の家賃が安いぶん、「このまま二人で住めたら助かるのに」と考えるのは自然なことです。
ただ、社宅は会社の福利厚生として用意された住まいです。同棲できるかどうかは会社のルールと住まいの契約条件によって決まり、本人や恋人だけで決められることではありません。この記事では、同居を考え始めたときに確認したいことと、認められた場合の生活費の考え方を整理します。
同棲できるかは会社と契約条件による
社宅にはいくつかの形があります。
| 形 | 主な特徴 |
|---|---|
| 社有社宅 | 会社が所有する建物に社員が住む |
| 借り上げ社宅 | 会社が賃貸物件を借り、社員に貸す。賃貸借契約の借主は会社 |
| 寮 | 単身者向けなど、入居者の条件が定められている場合がある |
どの形でも、誰が住めるかは会社の規程で決まっています。配偶者や扶養家族との同居を認める規程、婚約者との同居を申請により認める規程、単身者用で同居を認めない規程など、内容は会社によって違います。「社宅だから同棲はできない」「借り上げなら大丈夫」とは一律に言えません。
無断で同居人を増やしてはいけない理由
規程を確認せずに恋人と住み始めると、次のような問題が起こり得ます。
- 会社の規程に反する:入居資格のない人を住まわせることが、規程違反として扱われる可能性があります。
- 賃貸借契約に反する:借り上げ社宅の場合、物件の借主は会社です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、記載した同居人に新たな同居人を追加する場合、借主は貸主に通知しなければならないとされています。実際の契約では承諾が必要な場合もあり、無断で住むと貸主と会社の間の問題にもなります。
- 費用の前提が変わる:社宅の自己負担額は、会社がその社員に住まいを提供することを前提に決められています。
規程違反がどう扱われるかは会社によりますが、退去を求められたり、二人の住まいを急いで探し直すことになったりすると、生活への影響は小さくありません。まず人事・総務に確認しましょう。
確認するもの
社宅規程
入居できる人の範囲(本人、配偶者、扶養家族、婚約者など)、同居人を追加するときの申請方法、自己負担額の計算方法、退去しなければならない条件が書かれています。
就業規則
社宅規程が就業規則の一部になっている会社もあります。住所や家族状況が変わったときの届出義務も確認します。
賃貸借契約
借り上げ社宅の場合、物件の契約は会社と貸主の間で結ばれているため、社員は契約書の内容を直接見られないこともあります。同居人の追加に貸主の承諾が必要か、入居人数の上限があるかなどは、人事・総務を通じて確認してもらいましょう。
結婚前・結婚後で条件が変わるケース
社宅規程では、配偶者かどうかで扱いが変わることがあります。
| 状況 | 規程で起こり得ること |
|---|---|
| 結婚前の同棲 | 同居が認められない、または婚約者に限り申請で認められる |
| 婚姻届の提出後 | 配偶者として同居が認められる。単身用から世帯用への住み替えが必要になる場合も |
| 結婚予定がある | 婚約の時点で申請できるか、婚姻届を出してからか |
結婚の予定があるなら、婚姻のタイミングと社宅の住み替えのタイミングを合わせて考えると、引っ越しが一度で済むこともあります。住民票の世帯の扱いは、同棲の住民票・世帯主はどうする?で解説しています。
家賃補助と借り上げ社宅の違い
会社によっては、借り上げ社宅ではなく住宅手当(家賃補助)を支給する制度もあります。仕組みが違うので、同棲への影響も変わります。
| 比べる点 | 借り上げ社宅 | 住宅手当(家賃補助) |
|---|---|---|
| 賃貸借契約の借主 | 会社 | 本人(または同居する相手) |
| 物件を選ぶ | 会社の条件の範囲内 | 自分たちで選ぶ |
| 同居人の追加 | 会社の規程と貸主との契約の両方が関わる | 手当の規程と、自分たちの賃貸借契約の条件が関わる |
| 税金の扱い | 社員が賃貸料相当額の50%以上を負担していれば、給与として課税されない | 現金で支給される手当は給与として課税される |
| 退職・転勤時 | 規程により退去が必要になる場合がある | 手当がなくなっても、契約は続けられる |
税金の扱いは、国税庁のタックスアンサーNo.2597で、社員から賃貸料相当額(固定資産税の課税標準額などから計算する額で、周辺の家賃相場とは異なります)の50%以上を受け取っていれば給与として課税されないこと、現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している物件の家賃負担は社宅の貸与とは認められず給与として課税されることが説明されています。
住宅手当で同棲する場合の確認項目は、同棲でも住宅手当・家賃補助はもらえる?で詳しく扱っています。
同居が認められた場合の生活費
社宅に住む社員をA、同居するパートナーをBとします。以下は説明用の試算例です。
- 周辺の同じような物件の家賃:月12万円
- Aの社宅の自己負担額(給与から天引き):月3万円
- 光熱費・食費・日用品など:月10万円
| 分け方 | 住まいの費用 | 暮らしの費用 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 自己負担額を折半 | A 1.5万円/B 1.5万円 | 5万円ずつ | 実際に払っている額を二人で分ける |
| Bが自己負担額を負担 | B 3万円 | 5万円ずつ | 社宅の恩恵はAの勤務によるもの、と考えて住まいの費用はBが持つ |
| 生活費全体を収入比 | 合計13万円を手取りの比率で分ける | ― | 住まいと暮らしをまとめて調整する |
周辺相場の12万円を基準に「Bは6万円払うべき」と考える必要はありません。実際に払っていない金額を基準にすると、Aが差額を受け取る形になり、二人の間のお金の意味が分かりにくくなります。基本は実際にかかっている費用から分けるのが分かりやすい方法です。
もう一つ意識したいのは、社宅はAの勤務を前提にした住まいだということです。Aが退職や転勤をすると、二人とも引っ越すことになる可能性があります。引っ越しの初期費用や、家賃が相場並みになったときの家計を、貯金の目標に入れておくと安心です。初期費用の目安は初期費用シミュレーターで、家賃の上限は同棲の家賃はいくらまで?で確認できます。
会社に確認する質問例
人事・総務に問い合わせるときは、次のように具体的に聞くと答えをもらいやすくなります。
- 社宅に配偶者以外の人(婚約者・交際相手)が同居することは認められていますか?
- 認められる場合、申請の方法と必要な書類は何ですか?
- 同居人が増えた場合、自己負担額は変わりますか?
- 婚姻届を出した後に、世帯用の社宅へ住み替えることはできますか?
- 退職・転勤・社宅規程の変更があった場合、退去までの期間はどのくらいですか?
- 同居が認められない場合、住宅手当など他の制度は利用できますか?
聞きにくいと感じる場合は、「結婚を考えていて、住まいの制度を確認したい」と伝える方法もあります。
よくある質問
恋人が泊まりに来るのも禁止?
一時的な宿泊と同居は、規程上の扱いが違うことがあります。どこからが同居にあたるかは会社の規程によるため、頻繁に泊まる場合は確認しておきましょう。
同居が認められなかったら?
二人で新しく部屋を借りるか、結婚のタイミングまで別々に住むかを考えます。新しく借りる場合の名義の決め方は、同棲の賃貸契約者はどっち?を参考にしてください。
パートナーの会社にも社宅制度がある場合は?
二人とも制度がある場合は、どちらの制度を使うと条件が合うかを比べられます。ただし、二人が同時に別々の制度を使えるかは、それぞれの規程によります。
まとめ
- 社宅・借り上げ社宅で同棲できるかは、会社の規程と賃貸借契約の条件次第
- 規程を確認せずに同居すると、規程違反や契約違反になるおそれがある
- 確認するのは社宅規程、就業規則、賃貸借契約(人事・総務を通じて)
- 結婚前後で条件が変わる会社もある
- 同居が認められたら、実際の自己負担額から分担を考え、退去時の費用にも備える
生活費全体の分担は、生活費の分担シミュレーターで試算できます。